リフィル処方箋の導入とその懸念

ちょっと気になる日常医学

リフィル処方箋とは

みなさんはリフィル処方箋というものを聞いたことがありますか?日本ではまだ導入されていませんが、その導入が検討されています。リフィル処方箋とは複数回使用ができる処方箋のことです。いつも同じ薬をもらうのに、毎回お医者さんに診てもらって薬の処方箋を書いてもらうのを煩わしく思った経験はありませんか?そこでイギリス、フランス、アメリカ、オーストラリなどではリフィル処方箋ないしは同様の「繰り返し使える処方箋」が導入されています。下に具体的な内容を掲載しますので、詳しくみたい方は下図を参照ください。日本で似た制度には分割処方があります。分割処方とは一度にたくさんの薬を患者さんに渡すことによる残薬などを防ぐために小分けにして薬を患者さんに渡すというものです。しかし日本では繰り返し使用できるリフィル処方箋のような制度は導入されていません。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image-2-1024x710.jpg
引用元URL: https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000805792.pdf

メリット・デメリット

メリット

 医療費削減

リフィル処方箋を導入した場合実際にどれぐらいの変化が起きるでしょうか

リフィル処方箋を導入した場合の経済予測をした論文によれば実に数千億円の医療費が削減できそうなことがわかっています。

各群の通常処方箋枚数を基に、診療費の最小見積額から算出した診療費総額と保険負担額の差を(2018 年改定点数による)と比べると、第一群では総額で 1,556 億円、保険負担額は1,089 億円、第二群では総額で 339 億円、保険負担額は237 億円の削減額がそれぞれ算出された。

前田あゆみ et al リフィル処方制度導入がもたらす経済性の効果予測 URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsp/39/1/39_35/_pdf/-char/ja

日本の医療費は現在、約44兆円となり、爆発的に増加していっています。厚生労働省の調査によるとその原因は高齢化が一番大きく、次に医療費の伸び率があるとしています

(参考URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000590695.pdf)。

分子標的薬など非常に高額な治療も増えてきたことによる影響も大きいと考えられます。

 医師の負担軽減

リフィル処方箋を導入することで患者の再診が減少します。それにより医師の負担が軽減することが考えられます。話はこんなに単純ではないですが、コロナの影響などで看護師不足、医師不足の状態や、それに付随して救急車のたらい回しなどが多数発生しましたが、そのような状態を少しでも減らせる可能性があります。医者や看護師さんが少ないために人が亡くなったということを少しでも減らせることの意義は大きいのではないでしょうか。

デメリット

リフィル処方箋がメリットしかないのならば既に全ての国で導入されているはずです。当然、導入によって想定される問題点もあります。

 医薬品の転売

医薬品の転売が発生することは容易に想像できます。リフィル処方箋が保険を効かして安く何回でも薬を購入できる魔法の紙に見える人も世の中にはいらっしゃいます。何らかの理由で保険に加入していない、またはできない人や保険適応で処方箋を書いてもらえない人などが安く薬を手に入れるために、リフル処方箋自体の売買であったり、薬の売買が発生する可能性は非常に高いと考えられます。そのため海外のリフィル処方箋でも2回まで、3回までの再購入しか認めないといった回数制限をつけるのが一般的のようです。それでもなお、医薬品の転売は懸念材料となります。

患者の変化に気づきにくい

医者又は医療従事者からしたら一番大切なのはお金よりも患者さんの状態です。患者さんの状態に合わせてお薬の処方を行なっています。それが、リフィル処方箋で、初回だけ来たら、以降は来ないとなればどうでしょうか。患者さんの状態が良くなっているにもかかわらず薬を飲み続けたりすることで副作用のリスクだけ上がる、状態がより悪化していて薬を変えなければならないのに、その状態の変化に気づけないなど様々な問題が発生する可能性があります。他にも、合併症、初回には現れていなかった原発疾患の存在の見落としなど患者さんの不利益が生じる可能性が懸念されます。患者さんとしては利便性を取るべきか、安全性を取るべきか色々な考え方や状況があるでしょうか。これらの危険性は絶えず付き纏います。

電子カルテへのスムーズな導入が困難

この4月からリフィル処方箋の導入が進む病院もあるようですが、病院内で用いられている電子カルテがまだリフィル処方箋に対応していないなど、技術的な問題が現場では生じています。今後、改善し、スムーズな対応がされればいいと思います。

課題・問題点

薬剤師の負担増加

リフィル処方箋の存在により患者さんがお医者さんと会う頻度は減る可能性がありますが、薬剤師さんとは毎回会う必要があります。そこでデメリットで挙げたような患者さんの状態の変化にこれまで異常に敏感に気づく必要が出てくるのが薬剤師さんとなります。そのため、薬剤師さんにはこれまで以上の知識が必要となってきます。欲を言えば、医者と同等の知識が望ましいと考えられます。その場合、薬剤師さんから患者さんへの質問(問診)はこれまで以上に長くする必要がありますし、時と場合によっては身体診察のようなことが必要になってくる可能性があります。結果として、薬剤師さんの負担は非常に大きいものとなってくることが考えられます。

薬剤師の力量への懸念

冒頭でも紹介したようにリフィル処方箋はアメリカやヨーロッパの一部では一般に普及しています。そして国によっては薬剤師さんがで処方箋を発行する権利を持つ国もあるようです。これらは薬剤師の資格に加えて各国独自の資格を付与することで成り立っているようです。「薬剤師の負担増加」のパートでも書きましたが、リフィル処方箋が導入されたら薬剤師さんはこれまで以上の知識 ・経験が問われることとなります。現在の日本では薬剤師さんは6年間の学生生活をしたのちに国家試験を受験して薬剤師の資格を取ることとなっています。今でも大変なのに、これからさらに医者と同様の知識を必要とされた場合、それはもはや「薬剤師」の区分なのかどうかすらわからない状況となります。現実的にそれらの負担が増えた時にスムーズに業務の移行が行えるのかどうかは不安が残ります。

まとめ・個人的見解

リフィル処方箋にはいいところがたくさんありますが、まだまだ課題が山積みなのではないかということがわかりました。そして医療費の削減は、国と国民としてはメリットでしかないのですが、医療を行う側からしたらどうでしょうか?医者の給料減少、病院の存続が危ぶまれるなどといったことが考えられます。そうした時に医者からの反発も想定されますし、結果として医者のなり手が減少する可能性もあります。ルーマニアでは医者の給料を下げた結果、医者が海外でていき、国内の医者が不足しているという話も聞いたことがあります。個人的には導入には賛成ですが、非常に限定的で慎重な導入が不可欠なのではないかと感じました。

2022 4月追記:リフィル処方箋が制度としては病院に導入される方針であることが病院内の電子カルテで通知されています。しかしながら、技術的な問題が生じて現時点では処方箋が出せないとのことです。そしてもう一つの問題はリフィル処方箋を処方してもらえる人はかなり限定的となるようです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました