医学的根拠のある薄毛治療【2017年ガイドラインから読み解く】

ちょっと気になる日常医学

こんにちはSKBです。今日は男性はもちろん女性でも多くの人が悩んでいる、または悩む可能性がある薄毛治療について2017年日本皮膚科学会ガイドラインを参照しながらどのような治療法があり、どのような副作用があるのかについてみていきたいと思います。

どのような薄毛治療があるのか

昔は有効な薄毛治療がなかなかありませんでしたが、現在ではある程度治療効果が望めるものが出てきました。しかし、男性だけでなく女性もまだまだ薄毛に悩む時代であるということは変わらず、これからますます薄毛治療の発展が望まれるというのが現状です。

では現在2022年ではどのような治療があるかについて解説していきたいと思います。

推奨度グレード

推奨度A:行うよう強く勧める B:行うよう勧める C1:行っても良い C2:行わない方が良い D:行うべきではない

フィナステリド内服

推奨度:A(男性型脱毛症)、D(女性型脱毛症)

推奨文:男性型脱毛症にはフィナステリドの内服を行うよう強く勧める。一方、女性型脱毛症には行うべきではない。

フィナステリド内服はテストステロンという男性ホルモンを薄毛の原因になっていると言われているジヒドロテストステロンに変換するのを助けているⅡ型5-α還元酵素を阻害する薬です。

難しい単語が並んでしまいましたが、要はハゲの原因を減らす薬となります。

数多くの臨床試験が行われてきましたが40歳未満の症例、重症度の低い症例でより高い効果を示しております。男性に対してフィナステリド1mg/dayの内服を1年間続けたところ58%が軽度改善以上の効果があったそうです。さらに5年間の内服を日本人男性でおこなったところ写真評価で99.4%で効果が得られたそうです。

副作用についての研究も日本人で実施されていますが、稀に肝機能障害がある程度で、大きな副作用は確認されていないようです。

大きな副作用は確認されていませんが、必ずお医者さんに相談してから内服を開始・継続してください。

女性にフィナステリドを投与した実験も行われていますが、効果が得られませんでした。さらに妊婦に投与すると男子胎児の正常な発育に影響を及ぼす恐れがあります。そのため、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性への投与は禁忌とされています。女性の方はフィナステリドを内服しないように気をつけてください。もちろん、男性でフィナステリド内服をされている方も、奥さんや娘さんが触れたり誤って飲んだりしないように細心の注意を払ってください。

デュタステリド内服

推奨度: A(男性型脱毛症)、D(女性型脱毛症)

推奨文:男性型脱毛症にはデュタステリド内服を行うよう強く勧める。一方、女性型脱毛症には行うべきではない。

デュタステリドの作用機序はフィナステリドと似ています。フィナステリドと同様にテストステロンを薄毛の原因となるジヒドロテストステロンに変換するのを助ける5-α還元酵素を阻害するのは同じなのですが、フィナステリドがⅡ型だけを阻害するのに対してデュタステリドはⅠ型、Ⅱ型を両方阻害します。

男性におけるデュタステリドとフィナステリドでどちらが効果があるかを調べた臨床試験では一部有意差を認めないものもありましたが、そのほかの効果はデュタステリドの方が優れていました。

しかし全体としてはやはり大きな差はないというものだったようで、更なる検討が必要な段階です。

そして気になる副作用ですが、デュタステリドの内服でリビドー減少(性欲減退)3.3%、インポテンツ5.4%、射精障害3.3%などと性機能障害などが確認されました。

そのため添付文書をよく読み、お医者さんから十分な説明を受けた上で服用してください。

そしてフィナステリドと同様に女性に対しては催奇形性があります。そのため奥さんや周りの女性が絶対に触れたり飲んだりしないように注意してください。

ミノキシジル外用

前の二つは飲み薬でしたが、塗り薬もあります。

推奨度:A

推奨文:ミノキシジル外用を行うよう強く勧める(男性型脱毛症:5%ミノキシジル、女性型脱毛症:1% ミノキシジル)

男性では2%ミノキシジルで行われた臨床試験で発毛効果が確認されました。そして2%と5%ミノキシジルを比較した比較試験の結果、5%ミノキシジルで有意に発毛が認められました。そして日本国内では1%と5%を比較した臨床試験が行われましたが、5%ミノキシジルで有意に発毛が認められました。

そして女性型脱毛症に対しても1%、2%、5%ミノキシジルを用いた試験を解析したところプラセボ群(偽薬)に対してミノキシジルを使用した場合では毛髪数の増加が確認された。

副作用は男女を通して掻痒(かゆみ)、紅斑、落屑(皮膚の荒れ)、毛包炎、接触皮膚炎、顔面の多毛などが確認されています。副作用はミノキシジルの濃度が増加するに連れて増加することがわかっています。

男女ともにミノキシジル外用初期に休止期脱毛がみられることがあり、これが外用中止につながる恐れがあります。そのため、いわゆる初期脱毛について理解することが必要です。

植毛術

推奨度:自毛植毛術はB(男性型脱毛症)、 C1(女性型脱毛症).人工毛植毛術はD

推奨文:男子型脱毛症には自毛植毛術を行うよう勧める。女子型脱毛症には自毛植毛術を行ってもよい。一方、男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに人工毛植毛術を行うべきでない。

人工毛植毛術は過去に多くの有害事象報告があり、推奨されていません。

また自毛植毛術についても「フィナステリド及びデュタステリド内服やミノキシジル外用による効果が十分でない症例に対して、他に手段がない状況において、十分な経験と技術を有する医師が施術する場合に限り、男性型脱毛症には自毛植毛術を行うよう勧め、女性型脱毛症には行っても良いこととする。」とあります。

植毛は臨床データが少なく、有害事象などもまだわからない部分が多いため、あまり推奨はされていません。

その他の治療

上記したものがメジャーなものになります。その他にも名前だけ紹介したいと思います。

  • LED及び低出力レーザ照射→推奨度:B
  • アデノシン外用→推奨度:B(男性型脱毛症)、C1(女性型脱毛症)
  • カルプロニウム塩化物外用→ 推奨度:C1
  • t-フラバノン外用→推奨度:C1
  • サイトプリン及びペンタデカン外用→推奨度:C1
  • ケトコナゾール外用→推奨度:C1
  • ビマトプロスト及びラタノプロスト外用→推奨度:C2
  • 成長因子導入及び細胞移植療法→推奨度:C2
  • ミノキシジル内服→推奨度:D

これらのものが薄毛治療としてありますが、これらは最初に紹介したフィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル外用、植毛などと比べてエビデンスが低くはっきり言ってしまえば推奨はされていないと考えられます。

特にミノキシジル内服には気をつけてください。ミノキシジルを個人輸入して内服されている方がいらっしゃると思いますが、副作用など懸念されていることが多く。わざわざ推奨度:Dと明記されています。安易にミノキシジルを内服しないように注意してください。

まとめ

今日は医学的な視点から見た薄毛治療について説明しました。薄毛治療に悩む人がエビデンスが揃っていない治療で無駄にお金を使うことなく、最も治療効果が高いと現時点で考えられているものに出会えるようにこの記事を書きました。

男性だけでなく女性も薄毛に悩む時代になってきました。

病院に行くのは気が引けるかもしれませんが、どうか病院でお医者さんからしっかり説明を受けて副作用、使用期間、初期脱毛の有無などを理解して満足のいく結果が得られますように願っています。

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