僕は将来お医者さんになって病気で辛い思いをしている人たちを助ける仕事をしたいんだ。でもお医者さんにもたくさん種類があってよくわからないんだ。
やぁマナブ君。将来医者になりたいんだね。医者の仕事は本当に種類が豊富で、みんなが思っているような病院で働くだけじゃなく、刑務所やお役所、会社で働くなどの多くの働き方があるんだ。医者の診療科としての種類について説明していくね。
医者が選択する診療科にはどのような種類があるの?
ドラマで見たような失敗しない外科医に僕もなりたいと思っているんだ。
マナブ君は外科医になりたいんだね。外科医と一括りに行ってもたくさん種類があるんだ。そして多くの人が知らないだけで、名前には外科とついていなくても実際には外科的な業務を日常的に行なっている診療科もあるんだ。内科・外科共にどのような種類に分かれていくのかなど説明していくね。
診療科の分かれ方
医者の診療科は非常に細かく分かれています。まずはその全体像を見てみましょう。
- 内科
- 外科
- 整形外科
- 形成外科
- 脳神経外科
- 小児科
- 産婦人科
- 皮膚科
- 泌尿器科
- 眼科
- 耳鼻咽喉科
- リハビリテーション科
- 放射線科
- 精神科
- 麻酔科
- 臨床検査科
- 病理診断科
- 総合診療
- 救急科
たっくさん診療科ってあるんだね。外科と整形外科や脳神経外科とか分かれ方が複雑なんだね。
そうだね外科といっても本当にたくさんありすぎて、一部の外科がつくものは外科とは独立して名前を持っているね。じゃあ実際に外科には何があるかについて一緒に見ていこう。
外科の種類
えー泌尿器科って外科なの!?
そうなんだよ。実は泌尿器や産婦人科や眼科、耳鼻科は家の近くにある診療所のイメージでいえば内科的な科に思えるよね。もちろんその一面も正しいんだけど、大学病院などでは手術をたくさんしている診療科になるよ。詳しく解説していくね。
外科の手術にはどのようなものがあるの?
みんなが興味ありそうな科について重点的に書いていくね。
消化器外科
消化器外科といっても大きく分けると。
- 管(大腸・小腸・胃)
- 肝胆膵(肝臓・胆嚢・膵臓)
のように分かれているよ。大腸癌、胃癌や肝臓癌などは非常に多く切除するような手術が行われています。胆嚢は胆嚢炎や胆嚢ポリープなどで胆嚢摘出などが行われています。膵臓では膵臓尾部切除(ざっくりいうと膵臓の切除)と膵頭十二指腸切除術という膵臓、十二指腸、(胃を切ることもある)などを切って再建(腸が連続するようにつなぎ直す)する手術を行います。これらの手術は腹腔鏡という長い器械をお腹や胸に開けた小さな穴から操作して行うことが多いです。大腸癌などの手術では最近ロボット手術を行うことが増えつつあります。肝臓癌は再発が多く、複数回の手術になると、臓器と臓器がくっついてしまう癒着が多いため、腹腔鏡ではなく、従来の上腹部の切開による手術を行うこともあります。
ロボット手術についてはこちらで詳しく書いていますのでみてみてください。↓
呼吸器外科
呼吸器外科では肺癌の手術などを行います。普段は肺には空気が入っているため、手術を行うスペースがありません。そのため、全身麻酔を行う時に気管挿管と言って、呼吸を補助する管を気管に入れますが、左右に分かれる気管支の片側だけをわざと換気することで腫瘍がある方の肺を意図的に萎ませて手術するスペースを作ります。このようにして術野を展開し腫瘍の切除などを行います。
心臓血管外科
心臓血管外科では大動脈解離などに対して破れた血管を人工血管に置換する手術や、心筋梗塞などで心臓を栄養する血管に十分血液が流れなくなった時に、他の血管から心臓に血流が行くようにする冠動脈バイパス術などといった緊急手術を行います。
そのほかにも大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換術という手術や、TAVIという血管の中を通って心臓に手術を行うものなどがあります。
心臓血管外科の手術の特徴として、人工心肺装置があります。主要な大動脈をつなぎ直す間に血流が脳や体に長時間回らないと障害が残ったり、生命の危険に繋がります。そのため、血管をつなぎ直す間は、血液を一時的に体外の機械に逃して血液の酸素化などを行なった後、脳や体の大事な部分に機械が再度送ると言った体外式循環を確立します。最近、感染症などの流行でECMO(エクモ)と言った単語を聞いたことがある人もいらっしゃるかもしれませんが、あれも体外式循環の一つです。
よく使う針糸などは4-0〜8-0程度です(数字が大きいほど細い)。眼科の10-0ほどではないですが、細く、日本における冠動脈バイパス術で心臓に血管をつなぎ直すときには心臓を止めずに動いたままの状態で行うため、非常に難しい手術となっています。
心臓血管外科は働き方が過酷(長時間かつ人が少ない)なため、他の外科医からもあそこはヤバイと言われるような診療科となっています。
意外に外科的な診療科
泌尿器科
泌尿器科的疾患は前立腺癌、膀胱癌、腎細胞癌、前立腺肥大症、尿路結石症、間質性膀胱炎、骨盤臓器脱などたくさんあります。
その中でも日本でたくさんいる前立腺癌、腎細胞癌などの手術を泌尿器科は行なっています。そして泌尿器科の特徴はロボット手術が発展しているということです。ロボット手術はなんでもロボットでできるというわけではなく、国によってロボットで手術することの有効性が認められたものから保険収載されて行っています。泌尿器科は骨盤内部という深部のため、ロボットが非常に有効で、ロボット手術が現在2023年の時点では最先端といえます。ロボット手術に興味ある人は泌尿器科は選択肢の一つになってくると思います。
産婦人科
実は産婦人科は産科と婦人科に分かれています。
産科はお産で子供を産むのを手助けする科です。一般に出産といってみなさんが思い浮かべるものは経腟分娩といいます。お母さんの股のところから赤ちゃんが産まれてきます。医者はこの経膣分娩で赤ちゃんが出てきやすいようにお母さんの股間を少し切って出産をアシストしたりします。そしてお母さんの感染症や赤ちゃんのお腹の中でも姿勢などによっては帝王切開といって、お母さんのお腹、赤ちゃんが入っている子宮を切ってお腹から赤ちゃんを取り出して出産します。産科といっても帝王切開は手術室で行い、外科的な手技だといえます。
そして婦人科領域では子宮体癌や子宮頸癌、卵巣癌といった腫瘍などを扱います。これは子宮を全て摘出したり、卵巣を摘出したりします。大学病院では妊娠されたお母さんの定期検診などの業務に加えて、こういった悪性腫瘍などの摘出を日々行なっています。そして産科は緊急手術となりやすく、手術室と入院病棟を行ったり来たりする生活を送っている医者も多いです。腹部を切開してお腹を開く手術もやりますが、腹腔鏡という長い棒をお腹に開けた数ミリの穴から差し込んで行う方法でもやります。現在では腹腔鏡、ロボット手術の適応が広がってきている途中と言えると思います。今後ロボット手術が主流になると考えられます。
産婦人科についてはこちらでも記事にしていますので、みてみてください。↓
眼科
みなさんが思い描く眼科も、町のお医者さんのイメージを持たれている人も多いのではないかと思います。コンタクトレンズの処方のために眼科に行かれたり、緑内障や白内障といった目の病気で行かれている人も多いと思います。
大学病院では白内障や緑内障の患者様のために手術を行なっています。一つ一つの手術が非常に短時間のため、1日に10件とか手術を行なったりします。あまりに回転が早いため、手術室の外で次の患者様が待っているみたいな特殊な状態も発生します。
白内障の手術としては目の中にある水晶体というレンズを割って吸引した後に人工的なレンズを入れる超音波乳化吸引術(20分程度の手術)や緑内障の線維柱帯切除術、線維柱帯切開術などが行われています。
眼科の手術は体の深くではないのでアクセスはしやすいのですが、非常に細かい手技が必要となります。そのため、手術では顕微鏡を使用して10-0という他の手術ではほとんど見ることがないような細い針糸を使用します。細かい作業が得意な人に向いているかもしれません。
耳鼻咽喉科
耳鼻科ってみなさんどのような印象を持っておられるでしょうか?私は花粉症や風邪の時に行く病院みたいな印象を医学部に来るまでは持っていました。
大学病院では難聴やめまいなどの診察・治療をももちろん行いますが、耳鼻咽喉科では手術も結構します。人工内耳植込術やアブミ骨手術、鼓室形成術などの耳に関係した部位の手術を行います。
そして咽喉科という名前がついていますが、これは喉の奥やその先の食道の領域についての科となります。実際にはここに発生した食道癌、喉頭癌などの手術を行います。ご飯を食べる通路を切除するので管が短くなります。それを補うために、胃を切って形を整えて喉までくっつける胃管再建や、空腸という小腸の一部を切り取って喉に移植する空腸再建などを行います。食道は背中の方にあるため、非常に手術時間が長く、難しいものとなります。根気が必要な手術です。
まとめ
今日は外科についてどのような手術があるかを書いてみました。これらの働き方は大学病院ならではの働き方となっています。街中の病院ではまた働き方が異なると思います。全ての科について書いたわけではないので、この診療科についても知りたいなどもあればコメントで教えてください。
近いうちに内科についても書こうと思います。
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