P.A.C.E. 世界が注目するソフトスキルを鍛える方法

勉強法

P.A.C.E.とは

現在世界で注目されているP.A.C.E.という単語をご存知でしょうか?

PACEとはPersonal Advancement & Career Enhancementの意であり

日本語に直すと「個人の進歩とキャリアの向上」といったところでしょうか。

そしてこのP.A.C.E.とは個人の進歩とキャリアの向上を実現するためのプログラムとして現在注目を集めています。

スキルの分類

このP.A.C.E.はソフトスキルという能力が現代社会を生き抜くために重要なスキルだとし、そのソフトスキルを伸ばすためのプログラムです。

ではソフトスキルとは何か?他のスキルには何があるのか?

能力には大きく分けてソフトスキルとハードスキルがあります。まずはハードスキルについて解説します。

ハードスキルとは

ハードスキルとはいわゆる資格など、数値化できる能力のことを指します。多くの人が学習を進めていく上で「資格」というものは一つの指標として非常にわかりやすいものとなります。

ハードスキルの例としては動画編集技術、ライティング技術、プログラミングなどがあります。医学部に所属する私としては医師免許であったり心電図検定であったりと資格があります。こういった学習で得られるスキルをハードスキルと呼びます。

こういった資格は仕事をする上で非常に役に立つし、それ自体がキャリアを形成する上で役に立ちます。このハードスキルは従来の学びで重要視されてきたスキルとなります。

ソフトスキルとは

ソフトスキルとは数値化することが難しい能力のことです。具体的にはリーダーシップ、プレゼン能力や、対人関係構築、組織形成、クリティカルシンキングなどの思考、忍耐強さ、決断力などといった非常に曖昧で目に見えない抽象的な能力のことを指します。

試験で高得点をとる能力と社会で生き抜く能力はイコールでしょうか?もしそれが事実なら東大生や医学生などは皆、有能なのでしょうか?実際にこれらの学生も、内部・外部問わず他の人間の優秀さに圧倒され劣等感を感じることは少なくありません。しかし彼らは試験で点をとる技術には長けているため試験で劣ることはありません。では何が彼らに劣等感を感じさせるのでしょうか?

それこそが「ソフトスキル」であると私は考えます。

なぜソフトスキルが大切か

学歴がないのに社会で成功している人は腐るほどいます。学歴不要論を唱える人すらいます。

なぜ彼らは成功しているのでしょうか?

それは彼らが高いソフトスキルを有しているからに他ならないと考えられます。

高い問題解決能力、プレゼン能力、忍耐力これらの数値化できない能力を武器に彼らはこの社会を生き抜いているのです。

多様化が進む現代社会ではますますこのソフトスキルが求められるシチュエーションは増加しています。数値化できず、目に見えないため、気づきにくいですが、このソフトスキルは欠かせないスキルとなっています。

成功の75%はソフトスキルによるもの

調査などによっても実際にソフトスキルの有用性が報告されています。

ノーベル賞を受賞したJames J. Heckmanは「HARD EVIDENCE ON SOFT SKILLS」の中でソフトスキルは人生を成功に導くための重要なスキルだと紹介しています。

またスタンフォード研究所とカーネギーメロン大学の調査によると長期的にみて仕事の成功の75%がソフトスキルによるものであり、25%がハードスキルによるものであると報告されています。(Sinha,2008)

雇用主が求めるソフトスキル6選

最近でも就職活動の際の学歴フィルターがニュースで話題になっていました。

学歴フィルターを突破するのに必要なのは「ハードスキル」しかしながら、大手企業に採用されるためには多数の面接をくぐり抜ければなりません。大手企業が面接であなたに問うているのは「ハードスキル」だけではありません。

圧迫面接や、フェルミ推定(答えがわからないような問題に対して論理的アプローチをして答えを推定すること(例:今ナイアガラの滝を見ている人は何人ですか?など)を課すことによってあなたの対応力・演繹力・思考力・コミュニケーション能力などソフトスキルを問うています。

つまり会社はハードスキルはもちろん、その中でも高いソフトスキルを有している人材を求めています。

雇用主が求めるソフトスキル6選

1位:聞く力

2位:細部への気配り

3位:有効なコミュニケーション能力

4位:クリティカルシンキング(物事が正しいかどうか絶えず疑う批判的思考)

5位:対人能力/新しい技術習得能力

Source: Cengage/Morning consult, a 2018 survey of more than 650 employers and 1,500 students.

2018年にMorning consult社が650人以上の雇用主と1500人以上の学生に調査を行いました。その結果、雇用主が社員に求める能力はソフトスキルが大きな割合を占め、ハードスキルはソフトスキルに比べると低いものとなりました。多くの雇用主は「聞く力」、「細部への気配り」、「有効なコミュニケーション能力」、「クリティカルシンキング(物事が正しいかどうか絶えず疑う、批判的思考)」、「対人能力/新しい技術習得能力」といったソフトスキルを社員に求めていました。しかしこの調査によると雇用主の75%がこれらのソフトスキルを有する人材の確保に苦労しています。

この事実からは、我々が学校の学びだけでは十分なソフトスキルを獲得できていないという事実が浮かび上がってくるのではないでしょうか?。ではどうすればソフトスキルを鍛えることができるのでしょうか?

ソフトスキルを鍛える方法 8選

ソフトスキルを鍛える方法 8選

今までソフトスキル、ハードスキルについて説明してきました。では実際にどうすればソフトスキルが鍛えられるか?その方法や、ヒントになるような情報を三つの論文を引用して紹介したいと思います。その三つの論文ではそれぞれ「P.A.C.E.プログラム」、「ペリープログラム」、「自己内省・他者内省」というものを主軸に置いています。

この8選は下に示す三つの論文で実際に効果があったものを参考に抽出したものです。

ソフトスキルを鍛える方法8選

・コミュニケーションを円滑にする方法を学ぶ

・問題点を抽出し計画立案から問題解決までのトレーニングを行う(問題解決能力を身につけるための3STEP)

・自己による振り返りを行う。(自身の行動と自身の価値・信念などがどのように結び付いているかなどを絶えず考えることなど)

・他者からのコーチングによる振り返りを行う

・熟練指導者によるメンタリング・コーチングを伴うグループワークを行う

・時間管理技術をトレーニングする

・ファイナンシャルリテラシーを鍛える

・ストレス管理技術を身につける

それでは具体的にそれぞれの論文のプログラムとその効果について説明し、より具体的なソフトスキルの鍛え方を紹介します。

P.A.C.E.プログラム

P.A.C.E.プログラムは「The Skills to Pay the Bills: Returns to On-the-job Soft Skills Training」という論文において、その効果が確認されたソフトスキルを上昇させるためのプログラムです。この論文ではP.A.C.E.プログラムとして、80時間のトレーニングを行いました。その内訳は

P.A.C.E.プログラムの時間・教育内容

  • 9.5時間:コミュニケーション
  • 13時間:問題解決/意思決定
  • 12時間:時間管理/ストレス管理
  • 5時間:実行の卓越
  • 4.5時間:ファイナンシャルリテラシー

でした。

このP.A.C.E.プログラムを受けた人たちは受けなかった人たちに比べて20%も生産性が上がったことが報告されています。そしてこのプログラムを受けた労働者たちが働いている会社は2.58倍もの純利益を得ることになりました。

具体的なトレーニング方法

  • 読書
  • スケジュール管理
  • ニュース、新聞
  • ストレス管理(ストレス解消法を学ぶ)

P.A.C.E.プログラムの内容は他の論文で見られるようなトレーニングと少し異なり「時間管理」、「ストレス管理」、「ファイナンシャルリテラシー」など実践的なものでした。これらは読書などで鍛えることができます。時間管理は、スケジュール管理を普段からしておくなどの工夫で改善できます。ファイナンシャルリテラシーはお金の運用方法を学ぶことや、ニュース、新聞などで身につけることができると考えられます。マネーリテラシーについての記事を読むことでも鍛えることができるとおもいます。ぜひ読んでみてくださいね。↓

ストレス管理であれば、ストレス解消法を学び、実践することで解決する可能性があります。ストレス解消法は記事にしてますのでよかったら目を通してみてくださいね。↓

ペリープログラム

ペリープログラムは長期的にはIQを向上させませんでしたが、学力テストのスコアを向上させました。これはペリープログラムによってテストの点をとるためのハードスキルが強化されたのではなく、ソフトスキルの強化によってハードスキル(テストの点)も強化されたと解釈されています。

ペリープログラムの教育内容

  • 他者との協力
  • 対人関係
  • タスク計画・実行・評価

ペリープログラムについてはJames J. Heckmanの2012年の論文「Understanding the Mechanisms Through Which an Influential Early Childhood Program Boosted Adult Outcomes」によって報告されたものです。意訳すると「幼少期のプログラムが成人に及ぼす影響のメカニズムを理解する。」といった意味です。

このペリープラグラムは123人のIQが低いアフリカ系アメリカ人の子供たちを対象として行われました。約半数がプログラムで教育され、約半数は比較のためにプログラムで教育せずに観察が行われました。ペリープログラムで教えられたのは他者との協力、対人関係能力、タスク計画、実行、評価といったスキルでした。

他のいくつかの論文でも若い年齢の子供たちにソフトスキル教育を実施すると、実施しなかった人たちと比べて将来的に賃金が大幅に上がることが報告されています。成人にこれらのプログラムが有効かわかりませんが、問題解決能力に加えて、他者とのコミュニケーション能力のトレーニングが鍵を握っていると言えそうです。

内省

Developing Soft Skills-A Change Management Perspective」はソフトスキルの開発について書かれたもので、本論文では自己内省(ふりかえり)・他者内省(コーチング)がソフトスキルを強化すると紹介されています。

  • 自分の特性、得意なこと、不得意なことを理解するために振り返りを行う
  • グループワークなどを通して他人からのアドバイスを受ける

自己内省という言葉からは、「自分の行いに対して反省する行為」を想像されると思いますが、本論文では自身の価値・信念・好み・態度が自身の行動にどのように影響するかを知ることも自己内省であるとされています。。

さらにグループワークなどで他人と協調、またはリーダーシップを発揮するようなソフトスキルは高度なソフトスキルなので、熟練した人からのコーチングが不可欠であると書いてあります。

リーダーシップやグループ活動などで発揮される能力を上昇させるためには他人からのアドバイスが大切になってきます。できるならば、自分が尊敬する人、なりたい人に具体的なアドバイスを求めるのがいいでしょう。その人なりの考え方や工夫を知ることで自身のスキル向上に繋げましょう。

そしてこれは私も生きていて実感しますが、「問題点を見つける力」を鍛えましょう。さらにその先の「問題解決能力」も同時に鍛えていきましょう。そこで「問題解決能力を身につけるための3STEP」を紹介します。

問題解決能力を身につけるための3STEP

STEP1:インプットしたことに対して自分の意見をもち言語化する(問題点を見つけましょう。必ず存在します。)

STEP2:さらに自分の意見と他人の意見を比較して自分の意見の問題点を見つける(内省)

STEP3:ここまで考えたら友達、先生、会社の仲間など誰でもいいので自分の意見に対するコメントをもらいましょう。(他人からのアドバイス)

これをするためには日々、インプットしたことに対して自分の意見を持つことを心がけると良いと思います。問題点を明確化するために必ず言語化するという癖をつけましょう。頭に靄がかかった状態から一歩先のレベルを意識しましょう。

そして気になったことをそのままにせず、その都度解決する癖をつけましょう。あーこれってどうなってるんだろう?頭にそうよぎった後何もしていない人いませんか?せっかく見つけた「問題点」を解決するところまで行うことによって問題解決能力を鍛えましょう。

上級者向け問題解決能力の鍛え方

・フェルミ推定を日常的に行う(友人などと行うとさらに良いでしょう。)

フェルミ推定は上でも書きましたが「今ナイアガラの滝を見ている人は何人ですか?」などの明確な答えがわからないような問題点について他人が納得できるような予想を行うことです。ちなみに私がフェルミ推定を行った場合のこの答えは0人です。現在私がこれを書いているのは2022年3月2日PM5時です。

ナイアガラの滝があるカナダ、アメリカの国境地域と日本の時差は約14時間あります。すると日本の時刻がPM5時なのでナイアガラの滝の現在時刻はAM3時です。そうなるといくら観光地であろうとも「今、滝を見ている人」は非常に少ないことが予想されます。さらにこの時間に滝を見ている可能性があるホームレスなどの存在についても考えましたが、カナダは北半球で今は日本と同じ季節の冬なので気温がとても低く、寒い中、滝の側にいて、さらにそれを見ている人は非常に少ないと推定しました。そこで私の答えとしては0人ではないかと考えました。

もちろんこれが事実かどうかはわかりません。しかし問題を抽出してそれについて論理的に考えるという行為が問題解決能力のトレーニングになります。さらに友人と議論しながら進めることはコミュニケーションのトレーニングにもなりおすすめです。最近、私が友人と行ったのは、ギターの弦は何倍振動しているか?というフェルミ推定を行いました。とても難しいですが、案外楽しいものですよ。

まとめ

ソフトスキルを鍛えるには以下の8点を行いましょう。この8選は三つの論文で実際に効果があったものを参考に抽出したものです。

ソフトスキルを鍛える方法8選

・コミュニケーションを円滑にする方法を学ぶ

・問題点を抽出し計画立案から問題解決までのトレーニングを行う(問題解決能力を身につけるための3STEP)

・自己による振り返りを行う。(自身の行動と自身の価値・信念などがどのように結び付いているかなどを絶えず考えることなど)

・他者からのコーチングによる振り返りを行う

・熟練指導者によるメンタリング・コーチングを伴うグループワークを行う

・時間管理技術をトレーニングする

・ファイナンシャルリテラシーを鍛える

・ストレス管理技術を身につける

ここまで見てきた中で、社会が求めているのはハードスキルに加えて高いソフトスキルを有する人材であることがわかりました。資格といったハードスキルは勉強をすれば獲得することができます。それに対し、問題解決能力などのソフトスキルは学校教育だけで身につけるのが難しい一方、一度身につけてしまえばどのような業種でも活きますし、あなただけの強い武器になり得ます。ソフトスキルはあなたの生き方を変えるほどの力を持っています。

個人的にはソフトスキルはグループワークや発表、問題解決など地道な作業を続けることによって磨かれていくものだと思います。学校などで行われているグループワークなどに対して真剣に取り組んでみる、様々な人とコミュニケーションをとる、普段なら行かないようなセミナーに参加してみるといったある種の「負荷」をかけてみてください。人生を左右するような学びが隠れているかもしれません。

興味がある方むけにPACEプログラムのURLを貼っておきます。

PACE - Soft Skills Program (Universität Paderborn)
Success in both academia and industry is dependent on more than just expertise in your chosen discipline. Nowadays all employers expect to hire professionals wh...

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