こんにちはSKBです。
みなさんはヒートショックという単語を聞いたことがありますか?ヒートショックはお風呂やトイレなど温度差が生じる場所で起こりやすいとされています。
厚生労働の人口動態調査によると令和3年の交通事故死亡者数は3536人でした。それに対して同年の不慮の溺死及び溺水死亡数が7184人、さらに警察庁による同年の水難事故による死亡者数及び行方不明者の合計が744人のため、お風呂などによる溺死が6000人以上いることが予想されます。
つまりお風呂は交通事故よりも多くの人の命を奪っています。
今日はそのヒートショックについて書いていこうと思います。
ヒートショックとは
ヒートショックとは気温の変化に対して私たちの体が対応する際に血圧が上昇したり下降したりする際に起こるものです。
お風呂場に入る前脱衣場などは非常に寒いですよね。そのような寒い場所では私たちの体は熱を外に逃さないように手足などの末梢の血管を収縮させます。つまり心臓が送り出した血液がそれまではスムーズに流れていたのに、末梢血管が細いため、スムーズに流れなくなり、血圧が上昇します。
この状態で「寒い寒い」と足先をぴょこぴょこさせながらお風呂にドボンと入る人がいます。(私です。一人暮らしなので許してください。)
お風呂に入ると、末梢血管が開くことにより、私たちの体の中にある血液が心臓に戻ってきにくくなり、瞬間的に循環血液量が減少します。これにより血圧が低下して、脳など重要臓器に送るはずの血液が減少します。
脳に血液が行かなくなると意識障害を生じたりします。
お風呂場で意識を失うとそのままずるずるとお湯の中に入っていき溺死することになります。
また血圧の低下に伴う血流の鬱滞により血栓などが作られやすくなります。これにより脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こしやすくなります。
この現象はお風呂では汗をかきやすく、そもそも循環血液量が減少し、血液がドロドロになりやすいというお風呂の性質も相まって起きやすくなっています。
皆さんは長時間お風呂に入って、「のぼせた」ことはありますか?あれは末梢血管の拡張により血圧が低下し、軽度の意識障害が起きている状態とも言えます。
お風呂に気持ちよく入って立ち上がる時に立ちくらみがしたことある人は多いと思います。足まで行った血液は立ち上がった分だけより心臓に戻ってきにくくなります。そのため脳はより一層血が足りなくなって立ちくらみなどが生じます。本来ならば立ち上がるときは末梢血管をしめて脳への血流を維持しようとしますが、お風呂では末梢血管が開くことによりこの現象はより一層起きやすくなっています。
ヒートショックは人事ではありません。
さぁ無事にお風呂から上がるために立ち上がることができました。この状態で寒い脱衣所に戻ったとします。
最初に説明したように、私たちの体は末梢血管を一斉にしめて、熱を外に逃さないようにします。
この作用により私たちの血圧は跳ね上がります。
急激に上昇した血管内の圧力は私たちの脳の細い血管などが破綻させ脳出血などが引き起こされます。
これらのメカニズムによりお風呂場では意識障害による溺死、循環血液量減少による心不全、急激な血圧の上昇、循環血液量増加(refilling)による心不全、脳出血などがひきおこされます。
病院によってはお風呂での死亡が多いため、お風呂自体をなくしてしまいシャワーだけにしている施設もあります。
どんな人がヒートショックを起こしやすい?
- 65歳以上の高齢者
- 心臓の持病がある(狭心症、心筋梗塞、不整脈)
- 脳卒中の既往がある
- 高血圧、糖尿病などの持病
ヒートショックでは急激な血圧の上昇低下などで心臓に負担がかかりやすいため、心臓に持病がある人でなりやすくなります。さらに脳出血をしたことがある人は元から高い血圧であった人が多く、血管がボロボロで破綻しやすくなっています。そのため、ヒートショックにより再び脳出血などを起こしやすくなります。
糖尿病の人や高齢者では自律神経という、血圧を維持したりと行った重要な役割を果たす機能が低下している人がいます。そういった人は血圧の変化を緩和させる機能が低下しており、ヒートショックの影響を受けやすいと言えます。
ヒートショックを起こさないために気をつけること 4選
ヒートショックを起こさないために、私たちが日頃から気をつけれることがあるので紹介しておきます。
- 飲酒後すぐにはお風呂に入らない
- お風呂の温度を上げすぎない
- お風呂に長時間入りすぎない
- 生活習慣病を改善するために適度な運動
飲酒をすると末梢血管が拡張します。そのため、お風呂に浸かった後の血圧低下が悪化します。飲酒直後の入浴は控えましょう。
お風呂の温度を上げることにより脱衣所との温度差がより顕著になり血圧の上昇、下降が激しくなりヒートショックを引き起こす可能性が大きくなります。そのためお風呂の温度は高くしすぎないようにしましょう。一番風呂をさけた方がいいという人もいらっしゃいますが、一番風呂は温度が高いことが原因です。そして最初に入った人のおかげで、浴室があったまっているというのも一番風呂を避けることのメリットとなります。
お風呂に長時間入ると汗をかいて血がドロドロになり脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こしやすくなります。そして循環血液量が減少して意識障害を起こす可能性が高くなります。長湯には気をつけましょう。
生活習慣病の改善については30分程度の運動を最低週3回程度が一般に推奨されています。無理のない範囲で生活習慣病を予防・改善して行きましょう。
おまけ・ヒートショックの疫学
ヒートショックによる死亡者数が増えているのかどうかが気になったため、厚生労働の人口動態調査から死亡者数のデータを抜いてきました。その結果を図示したのがこちらになります。
このデータによると平成29年に死亡者数の増加がありますが、そのほかに目立った死亡者数の増加は認められません。データは割愛しますが、死亡率についても大きな変化は認められておりません。
そのほか、男女差も大きな差は認められません。しかし、男女差のデータを解析したところp値<1%で有意差がでたため、男性の方が不慮の溺死及び溺水死亡数が多いということは言えるかもしれません。
まとめ
今日はヒートショックについてかきました。
厚生労働省のデータでは溺水などの死亡者合計は年に7000~8000人程度ですが、年間19000人程度死亡しているとするデータなどもあるようで、よりデータを紐解けばヒートショックの死亡者数はとんでもないものとなっているかもしれません。
ヒートショックは人事ではありません。
高齢の家族が風呂からなかなかでてこいないな。とかお酒を飲んだ直後に風呂に入った日などは注意して見ておきましょう。
また部屋の室温に注目したデータもあるようで、地域によっては冬季の室温が低いという指摘をしていう方もいらっしゃるようです。エネルギー節約の観点から節電などを国や自治体が訴えているかもしれませんが、室温が低いことによる高血圧それに付随する致死的病態の発症なども想定されるので、室温があまり低い状態にならないように気をつけてください。
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