【現役医学生が解説】倒れる人続出!?匂いは?医学部 解剖実習の全て【各対策まで紹介】

医学部の6年間

こんにちは現役医学部生のSKBです。

今回は医学部で行われる解剖実習について解説しました。

どんなことをやって、どんな風に感じたのか?自分の実体験も踏まえて説明しています。

実際に倒れる人は?忙しさはどうなのか?他では語られることのないリアルな体験談までお伝えいたします。

医学関係の学部を目指している人や、これから解剖実習がある方など参考にしていただけたらと思います。

解剖実習とは

解剖実習は人体の構造について学習するためにご遺体を解剖する実習です。

医学部医学科の2年次に行われ、学生数名が1グループとなり、各グループで1体を担当し、数ヶ月かけてご遺体の全身を細かく解剖することになります。

献体により提供された大切なご遺体を解剖することになるので、失礼のないように扱うことが求められ、学生には大きな責任が伴います。

実習の流れ

班分け

班分けは基本的には学籍番号順によって決められます。

数ヶ月の長い時間を共にするメンバーなので、班分けは実習が充実したものになるかどうかの、特に重要な要素です。なかなか作業が進まずイライラするなかで、メンバーとの相性が良くないと不仲になったりする班も見られました。また後述するように解剖実習では予習が重要なため、ちゃんと予習をしてこないメンバーがいると非常に厄介です。

一部、班分けを自分たちで決められる大学もあるそうなのでその場合はメンバー選びを慎重に行いましょう。

ご献体との対面

やはり皆が1番身構えるのはこの瞬間なのではないでしょうか?

ご遺体ははじめジッパー付きの緑の袋に入れられて、解剖台の上に置かれています。この時点ではご遺体は見えないようになっています。この袋を開けた瞬間にご遺体と対面することになります。

私はショックで倒れたりするのではと心配していましたが、そんなことはなく、他の学生も平気そうでした。ホルマリンにつけられていたご遺体は生きた人間の肌とは違い、硬く湿っている感じで、「人間の形をしたなにか」という印象でした。

解剖

ここでいよいよ解剖が始まります。基本的には「解剖実習の手引き」という教科書の順に沿って進められます。解剖台の上に教科書を置き、それを見ながらという形になります。

解剖自体の流れですが

最初は皮膚を剥ぐことから始まります。ここで初めて人間の皮膚にメスをいれ、人間の体を壊すということになります。一太刀目は緊張しましたが、何時間も作業をしていると、その日のうちには人間の体を解体することに慣れてしまいます。

慣れの話でいうと、はじめのうちは自分の白衣にご遺体の組織がつくことに抵抗があっても、慣れてくると次第には腕を体の上に置いて作業をしたりします。白衣の袖は組織液でびしょびしょになります。

解剖実習では予習が非常に重要です。その日に剖出する部分が決められており、その部分の体の構造について予習してしっかり理解しておかなければ、難しい作業になるでしょう。特に細かい血管や神経に関しては教科書上では理解していても、実際に見つけるのは大変だったりします。気づかずに周りの結合組織ごと取り除いてたなんてこともしばしば。

その日の終わりにちゃんと剖出ができているかを先生に確認してもらいますが、神経や血管を誤って取り除いたりしてしまうと叱られてしまいます。

男女の献体を見せ合う

実習では各班に献体が1体ずつ割り振られますが、それでは自分が割り振られていない性別の解剖構造を見ることができません。当然男女で体の構造が違うため、両方とも見る必要があります。

そこで解剖実習では男性/女性の献体を担当する班でお互いに剖出部分(解剖して露わになった部分)を説明しあう時間が設けられます。特に性器や胸部などの違いが大きい箇所ではそれが重要になってきます。

休憩時間(食事・飲食)

普段の授業と同じく昼食の時間は設けられているので、食事に関しては心配することはありません。

常に先生が生徒を見張っているわけではありませんし、他の班の献体を見にいっている人もいたりで終始ゴチャゴチャしているので、ちょっとした休憩などで外出したりはしやすいかと思います。また実習室内は飲食禁止なので、飲みもの休憩などもみなさん適宜とっているようでした。

口頭試問

口頭試問とは先生によって口頭で行われるミニテストのようなものです。実習は体の部位別に数セクションかに分けられていますが、そのセクションが終わるごとに口頭試問は行われます。

数人の先生がそれぞれ各班をまわってテストしていきます。回ってくる先生によってテストの難易度が大きく変わったりするので、どの先生がくるのか生徒は一喜一憂します。

解剖実習の口頭試問では基本的には「〇〇の血管・神経はどこ?」のような質問が多く、ちゃんと予習・実習をしていたら答えられます。

納棺

解剖が終わると最後にご遺体を棺に納めます。

最終的にはご遺体はバラバラになっていますので、各臓器ごとに袋につめたりしてまとまりをよくし、できるかぎり解剖前に近い形になるように納めていきます。

そして花束も棺のなかに献花します。この花束は解剖班で1つ、近くの花屋さんで事前に買っておいたもので値段は1,500円-3,000円くらいになります。

慰霊祭

医学の発展のため、献体をしてくださった故人のご冥福をお祈りします。

ここでは全員スーツでの参加になります。髪を染めている人は黒に戻し、スーツも黒を着用しなければなりません。

装飾が少しでも入っていたら注意されます。うっかりストライプが入ったスーツを着てきていた知り合いは大学の人に新しい喪服をその場で買えと脅されていました。そのぐらい大事なイベントとなります。

準備するもの

解剖実習の手引き

解剖実習はこの「解剖実習の手引き」に沿って進められます。学生全員が持つことになる教科書で、予習などもこの手引きを参考にしていくことになります。

手引きには絵による解剖構造の説明と解剖していくときの流れが記載されています。解剖台に置くと汚れるので、実習中に使う手引きと家で予習に使う手引きの2種類を持っておくことをおすすめします。

その他参考書

解剖の手引きは簡単な絵で解剖構造の説明がされているので、実際の献体と見比べた時にわかりにくいことも多々あります。そこで解剖実習の手引き以外にも参考書があると便利です。

解剖学カラーアトラスや、イラスト解剖学、解剖構造が3Dで見られるアプリなどを使用している人も多かったです。

服装

解剖を行う際は以下の服装で行うことになります。

  • Tシャツ・長ズボン
  • 白衣 
  • サンダル(実習室用)
  • 手袋
  • マスク

まず解剖では服が汚れる可能性が高いので汚れてもいいTシャツとズボンを用意しましょう。その上に白衣を羽織ります。白衣は大学で売っている3000円程度のものを使用しました。

また実習室内ではサンダル(クロックスなど)を履いて作業することになります。クロックスの上にメスなどを落として突き刺さったら怖いなぁと最初は想像してましたが、クロックスは手術などでも使用している人も多くポピュラーなものです。クロックスの上部に穴が空いてないタイプがベターです。

そして当然手袋・マスクはつけますが、この2つに関してはニオイ対策などで毎日取り替えたり・2重にしたりするのでたくさん用意しておきましょう。

解剖セット

解剖を行ううえで必要になるメスやハサミがセットになったものです。こちらは生協で買うことができ、先輩に譲ってもらう人もいました。

その他解剖の際に使う、ピンセットやノコギリなどは実習中に供給されます。

絶対NG!?驚愕のエピソード3選

初めて包茎を見た女子

ある班の女子が「教科書と違う」と言って、男性の陰茎の構造が理解できないようでした。

そこで見にいってみるとその献体は真性包茎の方で、教科書に載っているような造形ではありませんでした。

女子には包茎などの知識がない人も多く、解剖の手引きや教科書には包茎の陰茎の記載がなかったため、構造を理解するのが難しかったようです。

細い神経・血管をぶちぶち切ってしまう

まだ解剖が始まって初期の頃は細かい神経や血管を探すのが下手で、要領などもつかんでいないため、細かい構造などはぶちぶち簡単に壊してしまうことが多いです。その勢いのまま進み、先生のチェックがあったときにきつく怒られるなんていうこともよくあります。

解剖はしっかり予習をしたうえで、慎重に作業を進めましょう。

壁に耳あり

これは実際に過去に起こった事件らしいですが、ある生徒が解剖実習に飽きてしまい、献体の耳を切り落とし壁につけて「壁に耳あり」という冗談を言ったそうです。

もちろんその学生は退学処分になりました。

みなさんもご献体に対して失礼な行動や態度は慎みましょう。

大変だった・苦労したこと5選【その対策】

忙しい・バイトができない!?

平日のほぼ毎日、6〜7時間の作業。また他の科目の授業も並行して行われるため、忙しいのは言うまでもありません。作業が夜の8時まで続くことも多かったです。

バイトは遅い時間からであれば行くことができますが、夕方からのバイトは入れない方がいいかと思います。(なんとか抜け出してバイトに行く人もいましたが,,,)

それに加え血管や神経の剖出では細かい作業が必要になります。あらゆる骨を切断して細部まで観察するので、力も必要になります。頭を縦半分に切断する際は神経などを気にしつつ、骨を切るので繊細さと力強さの両方が必要です。またずっと同じメンバーでやるわけですから心身ともに疲労していきます。

ただ作業の難しさもご献体の体質などによって様々で、いつも早く帰れる班というのも少なからず存在しました。また予習をしっかりしていればその分作業も早く終わり、早く帰ることができます。

ニオイは!そしてその対策

「ホルマリンに匂いがキツい」「服に匂いがついてとれない」

などと噂されていたが、実際はどうなのでしょうか?

匂いのキツさに関しては最初はもちろん独特な匂いに戸惑うと思いますが、基本的にはすぐに慣れます。服のニオイは長時間実習室にいるため多少はつきますが、実習用に汚れてもいい服に着替えるため気にはならないでしょう。

ただ土日明け、連休明けの実習ではしばらくニオイを嗅いでいなかったせいか、キツく感じることが多かったです。

匂い対策は以下の通りです。

匂い対策
  • マスクを2重で付けたり
  • 手袋を2重にする(手に匂いがつかないように)
  • 白衣をコインランドリーで洗濯(友達と一緒に)

コインランドリーは結構値段がするので、自分の白衣だけ洗うのではなく、友達の白衣と一緒に洗って料金は割り勘しましょう。

倒れる人、続出?!

解剖実習中に臓器などを見たり、ホルマリンの匂いがキツくて気分が悪くなるといったことがちょくちょくあるそうですが、私が見た限りでは実習中に倒れる人はいませんでした。解剖実習ではご遺体はホルマリンという薬品で固定されているため血液を見る頻度も少なく、血が苦手な人も特に問題なさそうでした。

解剖自体もいきなり体を切断してというよりは、表層から徐々に徐々に見ていきますしかつ目の前の作業に集中しているためグロテスクに感じることはあまりありませんでした。後で落ち着いて振り返ると自分はすごいことしてるなと感じます。

ただ新しく運ばれてきたご遺体を解剖実習用に保存処理する工程を見学した際には気分が悪くなり倒れた学生はいました。この工程ではまだ固定されていないご遺体の頭を開いて脳を取り出すため、より新鮮な血液や組織、脳が見えていまい気分が悪くなったようです。

カビの大量発生

解剖を行う上でご遺体は常に湿潤保っておかなければいけません。乾燥してしまうと組織が硬くなってしまい細かい剖出などが難しくなります。

逆に言えば、常に湿っているということは当然カビも生えやすい環境です。カビが発生すると周りにどんどん浸食していくため、早急な対応が必要になります。

私の班ではこのカビが大量に発生したため、対処に追われました。

スクランブルエッグが食べられなくなる?

「スクランブルエッグが脂肪組織に見えて食べられなくなった!」

「筋肉に似てて、焼肉を食べたくない!」

といった噂も実習前に先輩に聞いたりしていました。

まあ実際にはそうなった人は私の周りにはいませんでした。極端に意識しすぎるとそうなるのかもしれません。先輩らも少し話を盛っていたのかもしれませんね。

まとめ

さて、今回は大学で行われる解剖実習について、その流れと苦労したことについてお話しました。

なかなか医療系の大学は閉鎖的でイメージが湧かないと思いますので、参考にしていただけていれば幸いです。

こちらの記事でも医学部の6年間について解説していますので、よかったら読んでください!

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